過去の実施記録

第29回 学術講習会

第29回学術講習会

今回の学術講習会のテーマは「あはき師による在宅ケアの実際 ~療養費取扱いのポイント 現場で求められる施術スキル~」です。講師は往診も含め治療院をされている西村博志先生です。西村先生は筑波大学理療科教員養成施設で在宅ケアに関する講義も担当されています。

まず、本講義では療養費の概要についてご説明頂きました。あん摩マッサージ指圧(以下、あまし)とはりきゅう(以下、はき)の療養費の違いのポイントとして、受給要件はあましの対象が拘縮や麻痺等の疾病に対して、はきでは慢性病の医師の治療手段が無い神経痛、リウマチ、頸肩腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症等となります。また、マッサージ同意書へのマッサージ施術の算定部位の記入の仕方など細かくご指導頂きました。

マッサージ施術は1局所350円で最大5ヶ所までとし、変形徒手矯正術は1肢450円で最大4肢までとなります。更に温罨法1回につき125円、電気光線器具1回使用につき160円になります。往療料は4㎞以内では2,300円でこれを超えると2,550円となります。療養費の疾病別の患者割合は、あましでは脳血管疾患による筋麻痺が多いのに対し、はきでは腰痛症や神経痛等となっています。はきの施術料金等についても、鍼又は灸の1術では初見料は1550円(初見料は1780円)、鍼と灸の併用する2術では1610円(初見料は1860円)、更に電療を行うと34円加算される等、具体的にお示し頂きました。

注意事項としては、同一疾病において病院に通院しながらはき施術は平行して実施はできないことです。次に、療養費、現金給付、償還払い、受療委任払いとの違いについてご説明頂きました。療養費は保険医療機関での診察、薬剤等、療養の給付によって診療を受けることが原則となっています。ここ数年前から始まった地方厚生局が管轄する受療委任払い制度についてもご教示頂きました。鍼灸マッサージは「償還払い」か「受領委任払い」での申請となり、あはき師が受領委任の取扱いをするには 地方厚生(支)局へ「施術管理者」の申請が必要となります。

また、患者様のレセプト作成までの基本的な流れについてのお話がありました。ケアマネジャー等からの相談、依頼を経て患者宅で面談し、医師への同意書依頼、カルテ作成、レセプト作成の後、レセプト及び往療内訳表を保険社に送付します。尚、半年に1回、施術報告書及び医師の再同意が必要となります。

療養費による在宅ケアの主な訪問先は個人宅の他、特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホームとなります。患者の紹介においては、ケアマネジャーが多く、この他、医師、患者様のご家族からの依頼されることもあります。この際、療養費の取り扱いについて解りやすい言葉でコミュニケーションをとることが大切とのことでした。患者宅での面接相談の詳細については、療養費の支給対象となる主訴、症状の他、かかりつけ医、保険証の確認を行い、療養費の説明及びスケジュール調整等を行います。

更に、医師への同意書依頼については、同意書依頼文を添える他、施術を継続する再同意の場合は半年ごとの同意書の交付及び施術報告書の必要性など様々な留意点についてご説明頂きました。尚、変形徒手矯正術は1ヶ月ごとに同意書の交付が必要となります。

往診に持参する道具としては、鍼灸の治療道具、手指消毒液 、電子血圧計、体温計、パルスオキシメーター 、使い捨て手袋、ホットパック、機能訓練用の道具(杖、歩行器、バラン スパッド)を挙げていました。施術の流れの例として、問診、バイタルチェックを5分程度で行った後に鍼灸マッサージ施術を15分~30分程度、機能訓練・運動療法を5分~15分程度、実施します。この他、介護相談等も随時対応するとのことでした。

座学の後、実践的な症例を用いてのお話があり、患者様のアライメント異常や姿勢の問題など臨床上、注意すべき点などについてご指導頂きました。自由に身体を動かせない患者様にとって、褥瘡等は常に意識しておかなければいけない問題です。この際、背抜き等の介護技術を取りいれることでこのような問題は回避することができます。長年、臨床に在宅ケアに取り組んでこられた西村先生の体験談等はきっと、今後、皆様の臨床に役立つことでしょう。超高齢者社会に突入している現況からして、今後、あはき師及び介護福祉士の在宅ケアに期待される役割は大きいと考えられます。今回の講習会で知り得た在宅ケアのノウハウを現場で活かして頂ければ幸いです。(文責 大内晃一)